Alberto Ginastera: ESTANCIA Discography

ヒナステラ: バレエ「エスタンシア」ディスコグラフィー

<その6. その他の編曲版のCD>

 吹奏楽編曲版以外にも、この曲の一部がいろいろな楽器によって演奏、録音されています。そうしたいろいろな編曲による「エスタンシア」をここに集めてみました。

金管アンサンブルによる演奏( Phil Snedecor 編曲)

 金

MILTON STEVENS (Conductor and Music Director)
Washington Symphonic Brass (Brass Ensemble)

2003, Washington DC

I. 2:59
II. 3:09
III. 1:50
IV. 3:42

 と

その他の収録曲
・レスピーギ:「シバの女王ベルキス」戦いの踊り
・R.シュトラウス:「サロメ」七つのベールの踊り
 ほか

「DANCES WITH BRASS」
[SUMMIT RECORDS DCD 375]

金管アンサンブルによる演奏( D.J.Shaw 編曲)

 金

Boston Brass
(Brass Ensemble)

2003, West Roxbury

 3:29

 と

その他の収録曲
・ハチャトゥリャン:「カイーヌ」組曲
・グリーグ:「ペール・ギュント」組曲
 ほか

「Within Earshot」
[SUMMIT RECORDS DCD 384]

金管アンサンブルによる演奏( Egil Smedvig 編曲)

 金管アンサンブルのための小品として、「エスタンシア」全曲版からの断片が一曲にまとめられています。冒頭は全曲の導入部(夜明け:「導入と情景」)で始まり、「黄昏の牧歌」の緩やかな部分を経て、また導入の曲に戻り、「農場で働く人々」の終わりの部分が唐突に出てきて曲を閉じます。つまり、組曲版の部分はほとんど出てきません。これもかなりひねくれた編曲と言えるでしょう。

Empire Brass
(Brass Ensemble)

1989, Lenox

 5:23

 ということで、その他の収録曲である「くるみ割り人形」「ペール・ギュント」「ハンガリー舞曲」「カルメン」などのナイスなノリから想像すれば、「エスタンシア」は絶対に「マランボ」を中心にしたノリノリの編曲&演奏になるだろうと期待しますよねえ、ふつう。でも実際は、「マランボ」どころか組曲でおなじみの旋律はほとんど聞かれずに終わってしまうんだからなあ。
 これだと、「静かな曲だけど、なんかわけの分からない速い序奏とコーダの付いた曲」という感じになっています。エスタンシアの中から「小麦の踊り」も「マランボ」も捨てて、あえてこの曲を選んで編曲した人って、どう考えてもヒネクレ者すぎます!
 ま、金管の技術はたいへんすごいので、この盤ではエスタンシアはいいから他の曲を聴きましょう(^^;)。

その他の収録曲
・ボロディン:だったん人の踊り
・プロコフィエフ:キージェ中尉
 ほか

「CLASS BRASS」
[TELAC CD-80220]

二台のギターによる演奏( Jorge Martinez Zarate 編曲)

 二台のギターのためのこの編曲は「バレエ:エスタンシアからの3つの舞曲」という副題が付いていて、1.「小麦の踊り」、2.「黄昏の牧歌」、3.「小舞曲」、の三曲が編曲されているようです。「小麦の踊り」は組曲版にもありますが、後の二曲は全曲版を聞かないと出てきません。まあ「小舞曲」には「マランボ」のおなじみのメロディーも出てくるのですが、ちょっと変わった選曲って感じですね。

SERGIO ASSAD & ODAIR ASSAD
(Guitar Duet)

1985, New York

黄昏の牧歌:1:40

 で、実はこちらの盤にはその三曲の中から「黄昏の牧歌」の一曲が収録されているのみなのです。この曲、組曲版のにあるメロディーは全然出てこないので、全曲版を聞いたことがある人じゃないと「エスタンシア」だということすら全く気が付かないでしょう。
 この一曲の演奏を↓のと比べてみると、こちらは全体的にアルペジオを遅めに取って「ダラララン」と聞かせまくっているのが特徴的です。わりとネットリとした感じの演奏になっています。
 ってことで、まあこのCDに関してはエスタンシアがどうこうというほどのものはありません。でもCD自体の企画としては、ラテンアメリカの珍しいギター曲が色々聞けてそれなりに面白いですけど。

その他の収録曲
・ピアソラ:タンゴ組曲
・ニャタリ:肖像
 ほか

「Latin American Music for Two Guitars」
[NONESUCH 9 79116-2]

DUO BERGERAC (KARIN SCHOLZ & PETER ERNST)
(Guitar Duet)

1994, Marktoberdorf

小麦の踊り:2:14
黄昏の牧歌:1:33
小舞曲:1:53

 こちらには上述の「小麦」「牧歌」「小舞曲」の三曲がぜんぶ入っています。もともとヒナステラはギター曲をあまり書かなかったようですが、彼の作品にはギター開放弦をまねた和音が出てくるなど、ギターに編曲しても雰囲気的にはピッタリはまりそうな感じですね。このギターによるエスタンシアも、ラテンな感じをよく醸し出していて「こんなギター曲ありそう」という気にさせてくれます。
 ただ、やはり「エスタンシア」という管弦楽曲をギターに直すとなると、どうしても楽器の演奏上の制約が感じられる箇所があるのも事実です。「小麦の踊り」がかなり速いテンポで弾かれるのは、もしかしたら撥弦楽器故の妥協なのかもしれません(弓のように時間をかけて伸ばして弾くわけにはいかないので)。あと、グリッサンドの部分なんかもやはり(ギターだとできないので)ちょっと苦しいかな、という感じです。
 演奏は、↑に比べると、アッサリ系でテンポも早めです。
 あと、ラストのとってつけたような「ジャカジャカジャカジャン!」は結構笑えたりして(^^;)

その他の収録曲
・ロドリーゴ:トナディーヤ
・ブルクハルト:トッカータ
 ほか

「TOCCATA」
[CRESCENDO CTH 2274]

ギターとヴァイオリンによる演奏

 ヒナステラの室内楽を集めたCDの中に、エスタンシアから二曲、器楽曲に編曲されて入っていました。「小麦の踊り」はギターとヴァイオリンによる演奏でZarate編(↑のギター二重奏のと同じかな)、「パンパ風トリステ」はギターソロによる演奏で、Salomon de Font編となっています。

MARIA ISABEL SIEWERS (Guitar)
RAFAEL GINTOLI (Violin)

2000, Weston

小麦の踊り:2:58
パンパ風トリステ:3:17

 

 はじめの「小麦の踊り」のほうは、ギターとヴァイオリンによる演奏。なかなか珍しい組み合わせですね。旋律の、音符の長いゆっくりしたフレーズはヴァイオリンが演奏し、伴奏のアルペジオをギターが受け持っています。こうした曲の構造を考えると、この二つの楽器(弓弦+撥弦)の選択はまさにピッタリという感じです。演奏も、所々に「タメ」を作ったりして、なかなかにくい演出もあって楽しめます。
 「パンパ風トリステ(悲歌)」のほうは、ギターソロによる演奏。原曲はバリトンの独唱曲ですが、ギターだけで演奏されるととてもシンプル。この曲のラテン風旋律がギターの音色とマッチして、ほんとうにスペインあたりのギターの小品かと思わせるような雰囲気になっています。
 ほんとに、音楽家のみなさんって、いろいろとよく考えてくれますよねえ。

その他の収録曲
・ヒナステラ:ギターソナタ
・ヒナステラ:無伴奏チェロのためのプネーニャ第2番
 ほか

「Ginastera vol.5 - Chamber Music」
[ASV CD DCA1103]

コンピュータによる演奏

 厳密に言うと、これは「編曲」とは言えないかもしれません。富田勲のシンセサイザーのようなものとは違い、同じコンピュータ音楽でも、こちらはコンピュータを使ってもとの楽器のオーケストレーションをできるだけ忠実に再現しようとしています。下記のCDには、組曲第I曲目の「開拓者たち」の、コンピュータオーケストラによる「演奏」を聞くことができます。

AKIHISA KANDA (K&A)
(MIDI Data Imput)
I. 3:00

 コンピュータ音楽というのから想像する富田とかYMOとかファミコンのドラクエとかからはだいぶ違い、実際のオーケストラの響きに近いゴージャスな音で聞くことが出来ます。時代は進んでいますねえ。
 そうは言ってもやはりどことなく機械的な雰囲気も残していて、またかなり遅めのテンポで演奏されているので、戦争ゲームのBGMのような印象も受けます。中太鼓に響き線ありの音が割り当てられて、行進曲のように聞こえるというのも理由の一つかもしれません。
 でも、さすがにコンピュータだけあって、まさに機械のような(というか、機械そのものなんだけど)アンサンブルを聞かせてくれます。人間のようにずれたり乱れたりしません。特に中間部の打楽器アンサンブルが出てくるところは、左右に配置された小太鼓と中太鼓が完璧なリズムを叩きます。どうせなら、楽譜の指定通り響き線のない音で、大太鼓を含めた究極のアンサンブルを聞きたかったものです。
 なお、機械的、といってもそれは「楽譜を再現しただけのつまらない演奏」ということでは決してありません。テンポの緩急やダイナミクスの幅を、MIDI制作者がきちんと音楽的につけてくれています。

 なお、このCDのもとになったNIFTYのFMIDICLAのホームページからは、IV曲目「マランボ」のMIDIデータがダウンロードできます。こちらも試しに聞いてみましたが、WindowsのMedia Playerではまさにファミコン的なチープな響きで、まあそれはそれで曲の骨組みがよくわかって面白かったです。その後、YAMAHA Soft Synthesizer(無料体験版)というのを入れてみて聞いたところ、なんと急にオケに近い豪華な響きに!でもタンバリンの音がカスタネットのようになるなど楽器の音がやや違っていましたので、CDのように聞くにはきっとちゃんとしたハードを揃えないとダメなんでしょうね。
 こちらもやはりアンサンブルが正確で、特に最初のほうで、6/8拍子の2拍目と4拍目に延々とリズムを入れるとこなんか、普通の演奏だとずれるのが普通という感じですが、これはその部分に関して「世界一安心して聞いていられる演奏」です(あたりまえと言っちゃあそうなんだが)。

その他の収録曲
・バッハ:トッカータとフーガ
・ストラヴィンスキー:春の祭典より
・アイヴズ:交響曲第4番II楽章
 ほか

「DTM Super Classics」
[キングレコード KICC 247]

ディスコグラフィー その1. <組曲版のCD>

ディスコグラフィー その2. <全曲版のCD>

ディスコグラフィー その3. <終曲「マランボ」のみのCD>

ディスコグラフィー その4. <ピアノ版のCD>

ディスコグラフィー その5. <吹奏楽編曲版のCD>

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