Alberto Ginastera: ESTANCIA Discography

ヒナステラ: バレエ「エスタンシア」ディスコグラフィー

<その4. ピアノ版のCD>

 ピアノの独奏曲(または連弾)として演奏されている「エスタンシア」の録音を、ここに集めてみました。

ピアノ独奏による演奏

 ピアノ独奏の曲として演奏されている録音がいくつかあります。誰が編曲したかは書かれていないので不明なのですが、もしかしたら作曲者自身のピアノスコアか何かからとったのかもしれません(御存知の方は教えてください)。なお楽譜はBoosey & Hawksから出版されているようです。

 ピアノ曲としては主に三曲が演奏されるようで、組曲版一曲目の「農場で働く人々」、二曲目の「小麦の踊り」、それと組曲には入っていない全曲版からの「小舞曲」を聞くことができます。この「小舞曲」は、楽譜も単独で発売されており、しばしば独立して演奏されているようです。

BARBARA NISSMAN
(Piano Solo)



Peqeina danza:
1:41
Danza del trigo:
2:34
Los trabajadores agricolas:2:53

 「ヒナステラ弾き」として有名な、バーバラ・ニスマンの全集です。ヒナステラと一緒に写っているジャケットの写真でもわかるとおり、彼女のピアノは作曲者本人にも認められており、彼の遺作である「ピアノソナタ第3番」はこのニスマンに捧げられています。
 この中に収められた「エスタンシア」は、「小舞曲」「小麦の踊り」「農場で働く人々」の三曲。演奏は基本的に「熱血系」と言えるかな。これは「エスタンシア」以外の曲についても基本的に同様なのですが、早めのテンポ、強めの打鍵でガンガン弾いていく感じです。ペダルも多く使って、ちょっと攻撃的な、インパクトのある音楽を作り上げています。ですが、ところどころ、もっと繊細なタッチで弾いてほしいなあと思う場面もあることは否定できません。また、技巧派ピアニストが多数活躍する現代、技術的にやや物足りない部分もあると言えるかも。
 とはいえ、こうしたプログレなライブっぽいノリは、ヒナステラの作品に非常にあっていることも確かです。 定番の一枚として、ヒナステラ・ファンは必携のディスクと言えるでしょう。

その他の収録曲
・ヒナステラ:ピアノ曲、ピアノを含む室内楽曲全部!

「The Complete Music For Piano & Piano Chamber Ensembles」
[Pierian 0005/6]

ARBERTO PORTUGHEIS
(Piano Solo)
1993, London

小舞曲:1:41

 ヒナステラのピアノ作品およびピアノを含む室内楽作品を集めた全集CDからの一枚。でも、このCDに入っているのは全曲からの(組曲には入っていない)「小舞曲」のたった一曲です。あっという間に終わってしまいます。まあ、この曲を目当てにこのCDを買うやつは世の中に(私しか^^;)いないでしょうね。「小舞曲」自体は「マランボ」の前半部分が独立したという感じの曲なので、普通はこのCDで「アルゼンチン舞曲」とか「ピアノ・ソナタ第1番」とかを聞いてる時に、途中で「あれ、今なんか耳に覚えのある曲が出てきたなあ」と意識される程度でしょう。
 演奏はわりと柔らかめのタッチで、クリアな音色を聞かせてくれます。曲の最後の部分ではその静かなタッチが幻想的な雰囲気を作っていて、↓の宮崎盤と比べるとまるで全然違う曲のようです。聞き比べてみるとおもしろいでしょう(こんな盤の聞き比べをする人間も、世の中にはやはり他にはいないでしょうけどね^^;)。

その他の収録曲
・ヒナステラ:ピアノ・ソナタ第1番
・ヒナステラ:チェロとピアノのためのソナタ
 ほか

「The Complete Piano Music Vol.1」
[ASV CD DCA865]

YUKIO MIYAZAKI
(Piano Solo)

1998(?),

小麦のダンス:3:31

 この宮崎幸夫というピアニスト、プロフィールを見るとまさに「南米音楽の権威」という感じですね。ヴィラ・ロボスを中心に、精力的に南米のピアノ曲を演奏、録音しているようです。
 このCDには組曲版のII曲目にあたる「小麦のダンス」が収録されています。これだけ聞くと、こんどは「エスタンシアってなんてきれいでまともな曲だったんだろう」と再認識します。もともと音が薄く、和音も普通のこの曲だけがソロピアノで弾かれると、まるでショパンとかそんな感じに近いです。逆に、他のヒナステラのピアノ作品の雰囲気からだいぶ違って聞こえるのも興味深いですね。
 なお、「小麦」の次の曲に「マランボ」が入っているので、エスタンシアの終曲の踊りを期待して聞きましたが、作品7のやつでした(別の曲)。

その他の収録曲
・アブレウ:チコ・チコ・ノ・フバー
・ポンセ:エストレリータ
 ほか、南米のピアノ独奏曲いろいろ

「LATIN AMERICAN CLASSICS
-PIANO ALBUM」
[LAC 980601]

YUKIO MIYAZAKI
(Piano Solo)

1999, Kiryu

小舞曲:1:38
働き者の農夫:2:50

 ↑と同じ宮崎さんによるアルゼンチンピアノ曲集。こちらにはエスタンシアからは「小舞曲」と「働き者の農夫(組曲I曲目)」が収録されています(一枚にまとめて入れてくれりゃあよかったものを....^^;)。
 全曲版からの「小舞曲」は前述のPortugheis盤と比べると、ペダルを多く使って重々しい感じになっているような気がします。「働き者の農夫」はMorenoの連弾版と比べると、短く切らないでやはりペダルを使って音を響かせる傾向にありますが、音符が少ない分すっきりした感じで取っつきやすくなっています。
 ↑にも言えることですが、こんな小品でも宮崎さんはダイナミクスやテンポの揺らし方などをいろいろ研究した上で演奏しているように感じられ、南米作品へ取り組む意欲が伝わってきます。

その他の収録曲
・アギーレ:アルゼンチンの歌第1集「5つの悲歌」
・ピアソラ:アディオス・ノニーノ
 ほか、アルゼンチンのピアノ曲

「LATIN AMERICAN CLASSICS
-ARGENTINA」
[LAC 20031]

ピアノ連弾による演奏( Hector Moreno 編曲)

 ピアノ連弾による演奏。2台のピアノではなく、1台4手による演奏です(たぶん)。組曲版の四曲が全て演奏されています。

HECTOR MORENO & NORBERTO CAPELLI
(Piano Duet)

1995, Cianti

I. 2:59
II. 3:01
III. 1:32
IV. 3:01

 演奏者の二人は、アルゼンチン出身。ピアソラやヒナステラにはさぞかし愛着があったのでしょう。「エスタンシア」組曲版4曲を全部ピアノ連弾で演奏しようと考えるだけでも素晴らしいと言えますね。
 この編曲では、CD解説にも「"再作曲"と呼んだほうがいいかも」とあるのですが、単純に音符をピアノに置き換えただけではなく、けっこうスコアをいじっていると思われます。そのせいか、原曲の感じとはかなり違った雰囲気になっています。不協和音のぶつかり、短く切られた強い打鍵、耳慣れない跳躍を含む旋律、激しいグリッサンドと、現代的な前衛作品をイメージさせる仕上がりになっています。
 でも、どう聞いても原曲と旋律が違っている箇所があるのはどんな意図なんでしょうかね?あと、IV曲目の「マランボ」の繰り返し部分がいちいちカットされています(最初演奏時間を見て「最速か?」と非常に期待したのですが、単なるカットだったので、ちょっとがっかり)。でもまあ最初からそういう曲だと思って聞けば、ピアノ連弾の技巧と迫力を楽しむことができるでしょう。

その他の収録曲
・ピアソラ:タンガーゾ(ピアノ4手版)
・ヒナステラ:3つのアルゼンチン舞曲(ピアノ独奏)
 ほか

「TANGOS y MALAMBOS」
[Frame CD FR9508-2]

ディスコグラフィー その1. <組曲版のCD>

ディスコグラフィー その2. <全曲版のCD>

ディスコグラフィー その3. <終曲「マランボ」のみのCD>

ディスコグラフィー その5. <吹奏楽編曲版のCD>

ディスコグラフィー その6. <その他の編曲版のCD>

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